点滴のみの食生活も終わりを告げ(といって
も、点滴もしておりますが)やっと本物の食
事が与えられるとの心温まるお知らせがあり、
その時の看護師さんのセリフ「ご飯は柔らか
めと普通どちらがいいですか?」なんという
慈愛に満ちたセリフだろう。思わず泣きそう
にというのは嘘だが、しかし生涯忘れられな
い場面であった。「普通で」と答えて、翌朝
さっそく私の分がトレーに乗ってやってきた。
「まってたよぉご飯ちゃん、久しぶりだね
ぇ。」ほとんどアホである。でも本当に自分
の分があるというこれだけで感動の嵐であっ
た。ご飯一粒、みそ汁一滴たりとも残さなか
ったことは言うまでもない。
よく病院食は不味いとか言う方がおられるが、
私に言わせれば「いらねぇんならくれよ」言
いたい。量は少ないけれど、お茶碗にご飯
(徐々に増量される)それと数点のおかずが
あって、汁がついて牛乳がミニサイズのさら
に半分(徐々に増量される)とフルーツ少々。
これのどこに不満があるのでしょう。あるは
ずがございません。贅沢は敵だ欲しがりませ
ん退院するまでは!!と大見得きっても入院
後半には、三回ほど牛乳を密輸してもらって
ましたが(爆)

さてさて入院生活も一週間以上が経過すると、
かなりなれてきて若い研修医が来ると「退院
はいつぐらいですかねぇ」などと真剣半分の
悪態をついていた。この頃になると「入院し
てるけどちゃんとした医者に診察(聴診器あ
てらりたりとか)されてないなぁ」と思いは
じめる。後で判明したが、担当の医師は看護
婦の問診・体温・血中酸素量・血圧・脈拍そ
して検査室でのレントゲンや心電図の結果で
間接的な診察をしていたのである。
つまり病室にちょくちょく来るのは研修医な
のである。入院患者とは彼らに経験をつませ
るための実験台といっても過言ではない。だ
から研修医に「退院はいつか」なんて答えら
れる訳がなかったのである。彼は何とかの一
つ覚えのようにいつも「原因がわからないん
ですよ。だからちょっと時間がかかるかもし
れません」とのたまわっていた。
なぜ小馬鹿にした言い方をするかというと、
入院生活3〜4週間位の時に中堅の医者が珍
しく訪れたので「退院はいつ位ですか」と尋
ねると「来週位には大丈夫ですよ」とあっさ
り答えるではないか・・・まさに目が点であ
る。ここで一句「研修医 仲間はずれで か
わいそう」

話を少し戻そう、入院生活も慣れてくると夜
も寝られるようにはなるのだが、いかんせん
9時に寝るとどうしても深夜から未明にかけ
て一度は目が覚めてしまう。さすがに1時2
時では早いのでこっそり空いているであろう
トイレ(廊下側の利点で迷惑かけずに出られ
る)へ行き、一度病室へ帰り4時30分から
5時位になってから待合室のソファへ移動し
て、徐々に明るくなる空を眺めながら、窓を
少し開けて外の空気にふれていた。というの
もフロアー自体に機械が多数置いてあり結構
室温が上昇傾向なのである。可笑しかったの
は、お見舞いに来て頂いた方々は汗流して、
あれほど大汗っかきだった私は干からびて汗
すら出ないという笑い話である。
季節も4月の半ば過ぎで風にあたるにはちょ
うどよく都心のビルの四階の風は気持ちがよ
かった。などと一人で格好をつけていたある
朝、ベテラン看護師さんが寄ってきて、「ん
〜毎朝早いねぇ、鶏のような生活だねぇ」と
笑って去っていった。こけこっこ〜〜(笑)

また、この待合室にも思い出があって、ある
日いきなり五十代半ば位の方から親しげに声
をかけられた。この方は何故か私の名前を知
っておられたのはビックリであった。私より
は長く入院されて、それも初回ではないよう
で、こういった方が結構な数おられるようで
皆さんある意味常連というかんじでお過ごし
で、その横の連絡で名前が伝わっていたよう
だ。そしてこういった方々は病棟のことに非
常に詳しかった
待合室から廊下に出て右手まっすぐ5m位行
った廊下の右側が私の病室で、左側がシャ
ワー室と洗面所になっている、そして廊下突
き当たりには鉄の扉が閉まっている。実はそ
の奥はICU(集中治療室)となっていると
教えてくださった。だいたい手術をされた方
は、数日ICUで術後の経過を見て大丈夫と
なってから一般病棟に移される。しかし日に
ちがたっても出てこないと待合室では「**
さん出てこないけど大丈夫なのかね。病室移
ったのか?」「いや〜俺はしらないよ」など
と同じ病室の患者さんの会話が聞こえてくる。
もしそのまま何の音沙汰も無ければ、それは
亡くなられたことを意味する、なんとも切な
い会話である。
しかしそれよりもさらに印象に残った話があ
った。ICUの中に重度の拡張型心筋症の方
がドナーが現れるのを長い間待っているとの
こと。年齢は私と同程度で奥さんもお子さん
もいるという。紛れもない現実が病院の中に
はあり原因不明とは言え私のような軽度もい
れば重度の方もいる、病気というのは本当に
不可思議なものであると痛感した。移植の話
はニュースになっていないようだが無事のご
退院を祈るばかりである。
それとこれも待合室で仕入れた知識だが、拡
張型の心筋症を含めた心不全であれば、医者
から証明書をもらって申請を出せば等級は下
だが障害者として認めてもらえるらしい。し
かしこの申請はする気にはならなかった。な
ぜなら絶対に治ってやるという気持ちは持ち
続けたかったからである。

そしてこの時期、何よりも嬉しかったのが、
自分一人でシャワーが浴びられるようになっ
たことだった。しかし、ここにも少々問題が
あった。それは「順番」である。どういうこ
とかと言うとシャワーが可能な決められた時
間帯に、その日浴びたい人は自分でシャワー
室の前に置いてある帳面に上から順番に部屋
番号と名前を記入するという方法なのである。
つまり自分が浴び終わったら自分の名前に取
消線入れて消して、次の人の部屋まで行って
呼んで来るという、患者間でやっていくシス
テムなのである。
前にもお話しした通りご高齢の方が多いので、
お風呂は楽しみの一つであるのはいいが気の
短いご老人は、何度も風呂桶もって帳面を確
認しに来て、「なんだよまだかよ」と言って
は帰っていくのである。一回あまりにも前の
人が出てこないと看護師にクレームを入れて
慌てて看護師さんが見に来たら出てきたとい
うお粗末な話もあった。
しかし、何故私がこのように詳しいかと言う
と、廊下側ベッドの特権で一部始終が見える
からである。(笑)そして何より良いのは、
ちょこちょこっとその日最後の方の名前を確
認して取消線が入っていれば、終い湯ならぬ
終いシャワーをゆっくり浴びなおかつ、次の
人を呼びに行くこともないのである。またこ
のシャワーにも面白い傾向があって、混むと
きはもの凄く混むが、空いているときは笑え
るくらい空いているのである。
ただ懸念されるのは、個人任せだと浴びない
人は本当に浴びていないような気もするので
ある。それを無くすためにも、部屋単位で時
間割を決めた方が良いような気もした。言っ
ちゃ悪いが病院側の手抜きであると指摘され
てもしょうがない。
いよいよ次回最終回です。。。




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