今回は浅草は観音裏に行って参りました。
所はと申しますと浅草5656会館の裏手に
ありまして,この脇道が柳通りと申します。
道路沿いに柳が植えてありまして,これがま
た柳に風と申しますようにさ〜っと風が吹き
ますとふわふわ〜っと風になびいて風情を醸
し出します。
いよっ日本一なんてぇ声をかけたくなるよう
な,場末の川向こうの下町に生まれ育ったあ
っしにはこの佇まいにすでに興奮状態でござ
います。
また浅草の表っ側とは違った静かな所であり
まして,25日給料日の金曜日だというのに
午後8時前でその人気の無さに思わず時計を
見ちまう位です。
さてさて通り沿いに歩いて3,4分って〜と
ころでしょうか,ほのかに店の明かりが見え
て参ります。生まれも育ちも観音裏の龍さん
に,「あの界隈は敷居がたけぇよ」と脅かさ
れておりまして,不安のあまり財布には5萬
両もの大金をいれておりました。ぱっと見で
確かに高級そうな佇まいでございますが,き
ちんと表に料金が書いてありまして,ほっと
一息しながらも「何でぇ安いじゃねぁか」と
弱虫の啖呵の一つも切りながら,「ごめんよ」
とさっそうと店に入ろうと思ったら地下に通
ずる改段でございました。ガクッ
下って行きますって〜と自動ドア,下駄箱に
靴を預けまして仲居さんの後をついていきま
す。右手に座敷,左手にカウンターという作
りでちょっとした高級感をだしており粋な作
りに関心していると仲居さんに「こちらにど
うぞ」と座敷を勧められ座ってみますと掘り
炬燵。こりゃぁ座りやすいと夫婦でご満悦。
余裕も出てきて辺りを眺めて見ますと,なん
と申しますか昭和という感じがプンプンとい
たします。けして悪い意味ではなく,「なん
か懐かしいねぇ」といった風情がいたします。
初めての店ということもあり,不味いとけっ
たくそ悪いので一番安い川風3800円コー
スを頼み待っておりますと突き出しがなんと
「あんきも」じゃぁござんせんか,ビール何
ぞ頼むんじゃ〜なかったと後悔しながら頂い
ておりますと,湯葉豆腐用のコンロやら鍋や
ら薬味やら団扇やらが運ばれてきます。「団
扇は何に使うんだろうねぇ」「まさかコンロ
に火をつけたら灼熱地獄になるんじゃないだ
ろうねぇ」と軽口を叩いておりますと,仲居
さんが「鍋の中の豆腐を食べ終わったら表面
を団扇で仰ぐと湯葉が出来上がります」なる
ほどそういう寸法になってるかぁと夫婦でた
まげておりました。
いやいや3800円コース侮りがたし,料理
はなかなかのもので,こっております。仲居
さんの料理を運んでくる時間も時を得て,い
い具合に仕事をしております。鍋の中の豆腐
を食べ終わり,いよいよ湯葉作り職人になり
まして,ぱたぱた扇いでおりますと店のねぇ
さんが,「もっと激しくやらないとダメです
よ」と実演してくれまして,さすが餅は餅屋
と驚くまに湯葉をこしらえてくれました。な
るほどなるほど,要領さえ飲み込めば凝り性
の私,焼鳥屋はたまた鰻屋かと言うくらいの
勢いで湯葉作りに励みました。
ひととおり品が出ますと軽い食事とデザート
まで出まして終了とあいなります。別段コー
スでなくても刺身なんぞのつまみもございま
す。しかしながら今回のお勧めはって〜と「
ざる豆腐」800円なりでございます。こり
ゃうまい。800円でもいい。それほどの一
品でございます。これは一人に一つの肴やさ
ん「イカワタ焼き」条約もしくはどんたく「
一人にビール大瓶一本」条約をここでも適用
すべきです。
じゃぁお勧めの豆腐の何がすごいかと申しま
すと,密度なんです。重いです。そして美味
いです。また店の方から食べ方の説明がなさ
れるんですが,一口目は何もつけてはいけな
い。二口目は薬味に荒塩だけ,三口目に生姜
・ネギをお好みでといった具合でお召し上が
り下さいとのこと,しかし私的には何もいり
ません。この豆腐と冷えた日本酒これで幸せ
になれます。まぁここの店は,豆腐好きか日
本酒好きか風情好きにしかお勧めはできませ
んが,もしどれかに当てはまるようでしたら
浅草3-34-11川風に行ってみてやって下さい。
ちなみに月曜休みです。