真夜中の病棟,必ずこのフロアーでもきっと
亡くなられた方はいるはずで,もっと言えば
病院自体でいったい年間何人の方が亡くなら
れているのだろうと思うと入院前であれば非
常に不気味だったと思えるのだが,いざ入院
という身の上になると自分でも不思議なくら
い恐怖感が無い。ある意味普通とは違う,あ
の世とこの世の間にいるような開き直った気
持ちだったのかもしれない。
だからトイレに行くのも点滴をガラガラ引き
ずりながら真夜中でも平気で歩いていた。逆
に二つしかない個室便座が空いてていいや。
という気持ちだった。
そんなある深夜のこと,一度目の不思議体験
は起こった。
私は二つのトイレの個室のうちの奥の方を使
うことを常としていた。空いていなければし
ょうがないが夜中であればたいがいは誰もい
ないので空いていた。
その日も奥の個室に入り,そして少したつと
誰かがトイレに来た気配を感じた。こんな夜
中に誰かが入って来るなんで珍しいと思って
いると,やがて隣の個室に入った音を聞いた。
正確には音もしたのだが,どちらかというと
誰かがいる気配なのである。そしてしばらく
ぼ〜っとしていた。
少々汚い話で恐縮だが,食事制限かつ水分制
限が厳重にされており,なおかつ心臓に負担
がかかるからいきんではいけない。という過
酷な条件でのトイレは、どうしても長い戦い
となってしまう。
やっぱり「でない」と諦めてトイレを出る準
備を始めた。そういえばお隣さん入ったきり
で静かだなぁ。大丈夫かなぁなどと思いなが
らトイレを出た。
そしてふと隣に目をやると隣の個室には誰も
いないのである。。。
やはり深夜のトイレの二度目の体験,トイレ
の個室の裏は人が2人並んで通れる位の狭い
通路になっていて公衆電話があったりするそ
んなに頑丈な作りでは無いので大きな声で話
していると筒抜けである。
そんなある夜中に個室に入って用をたしてい
ると人が走って来る音が聞こえるのである。
しかしトイレの位置に看護師さんお医者さん
が深夜に走って来る理由は無い。ここを通過
しても業務用エレベーターしかないから病棟
に急ぐのであれば,まったく違う方向なので
ある。ぱたぱたぱたぱた・・・その足音はト
イレの裏辺りで止まり「はぁはぁ」と人の息
づかいが聞こえた。これは確かに聞こえた。
さすがに「この時間になんだ!?もしや・・
・脱走(笑)」などとアホな発想していたの
でちゃんと覚えている。
そしてしばらくすると,またぱたぱたぱたと
走り出しどこかへ行ってしまったようだった。
何やってんだかと思っているとしばらくして
また。ぱたぱたぱた・・・と走って来る音が
した。さすがに怪しく思ったが,いかんせん
片手に点滴針打ち込まれてローラーの付いた
金属棒に点滴袋をひっさげていると行動はめ
ちゃめちゃ鈍い。ましてや便秘で苦しんでい
るのに確認しにいく気力はなかった。そして
やはりしばらくするとまた走って消えていっ
た。
しかしよくよく考えると完全看護なので付添
は誰もいない,つまり健康でいるのは当直の
医者と看護師そして不健康に心臓患って入院
してる患者。いったい誰が走っていたのだろ
う。。。